1. リモート&出勤のハイブリットワーク
つながりを維持する難しさ
リモートワークおよびハイブリッドワークの普及は、コミュニケーションのあり方に新たな課題を浮き彫りに。偶発的な対面の機会の減少、新入社員の新人研修やメンター制度の難しさ、チームの一体感の維持、そして情報アクセスの公平性の確保などが挙げられます。
厚生労働省の調査によれば、テレワーク経験者の45.3%が社内コミュニケーションの減少を感じています (14)。具体的な課題としては、従業員の勤怠管理や業務進捗の把握の困難さ (15)、従業員の孤独感の増大と帰属意識の低下 (15)、そして雑談の機会減少による新しいアイデアの生まれにくさ (15)が指摘されています。特にハイブリッドモデルにおいては、リモートワーカーとオフィスワーカー間での情報格差や、雑談の減少によるチームの一体感の希薄化が問題となります (18)。
これらの課題への対応策として、エン・ジャパンのバーチャルオフィス導入 (15)やウィルゲートのオンライン懇親会 (15)といった意図的な取り組み、ツールの利用ルールの明確化 (15)、定期的な1on1ミーティングの実施 (15)などが挙げられています。
リモートワークやハイブリッドワークへの移行は、コミュニケーションの「儀式」と「空間」の根本的な再設計を必要とします。オフィスでの自然発生的な非公式コミュニケーション(「雑談」)の喪失は、孤独感、進捗管理の困難、アイデア創出の減少につながります (14)。これは、単にオフィスベースのコミュニケーション習慣をツール経由でリモート環境に置き換えるだけでは不十分であることを示唆しています。組織は、かつて物理的な共在の副産物であった肯定的な偶発的相互作用と文化的結束を再現するために、新しい「儀式」(例えば、業務以外の話題のためのチャットチャンネル、エン・ジャパンの事例のようなバーチャルオフィス (15))を意識的に設計し、意図的な「空間」を創り出す必要があります。この再設計がなければ、コミュニケーションは取引的でタスク中心のものとなり、文化やつながりが希薄化してしまうでしょう。
2. グローバル展開:
異文化間のコミュニケーションは文化理解が不可欠
多国籍企業におけるコミュニケーション課題は、言語の壁、文化的に異なるコミュニケーションスタイル(ハイコンテクスト対ローコンテクスト)、タイムゾーンの違い、そして多様な地域間での統一された企業文化の維持の難しさなど、多岐にわたります。これらの課題は、グローバル戦略の実行、海外拠点の効率的な運営、そして国際的なチームの結束に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
主要な課題としては、文化的に異なる相手との信頼関係構築の難しさ (11)、言語能力不足による的確な意思伝達の困難 (11)、異なるコミュニケーションスタイルへの適応、そして仕事の進め方や価値観の違いへの戸惑い が挙げられます。例えば、言語の問題で意図が正確に伝わらなかったり、階層構造に対する意識の違いからコミュニケーションが希薄になったり、無意識の偏見が影響したりすることがあります 。
具体的な事例として、インドにおける残業依頼に対する文化的な抵抗 (13)や、「できるだけ早く」といった曖昧な指示が通用しないケースが報告されています。また、日本で一般的な「持ち帰り検討」という商習慣が、海外では迅速な意思決定が期待される場面で通用しにくいといことも。
海外でのビジネス慣習、文化的背景を理解せずに失敗することはあります。
残業 、緊急性 、意思決定のスピードに対する見解の相違例が示している通り、より深いレベルの理解が必要であることを意味します。これを怠ると、誤解、モチベーションの低下、そして業務の非効率性を招くことになります。
これらのケースから、相手の持つ文化的背景を理解し、相手の個人的背景を理解する重要性が必要であることがわかります。海外の例を紹介しましたが、日本でも同じく、ある程度の共通の背景を持っていると油断してはやけどをすることもあります。
隣の席の社員が「仕事で嬉しく感じたり、楽しく感じること」「これだけは嫌だ」と感じることなど、案外知らないものです。日々の雑談の中ではなかなか出てこない「価値観」を知らずにミスコミュニケーションが起こることはよくあることです。